Tuesday, September 22, 2015

遠い日の思い出。

私が中学2年生のときのことです。

顧問の先生と部員何人かで,近くの文化会館へお芝居を観に行きました。

帰りにラーメン屋さんに行き,餃子を頼みました。

カサハラさんはお家の手伝いをほぼしないだらだらニンゲンだったので,餃子のたれは餃子のたれとして食卓へ上がっていました。顧問の先生に教えてもらって,そこで初めて餃子のたれの作り方を知りました。

そして半月後。秋の文化祭に向けて台本を決めようとなったときのことです。

先生はあの,文化会館で観たお芝居をやろうと提案してきました。

私は(え。いいんだ?)と思いましたがそれに対して声を上げることはなく,観てきたお芝居の記憶を頼りに先生が台本を書き上げ,オーディションでキャストを決め,練習し,本番を迎え,よかったねーと評価されたのでした。


そして中学3年生のときのこと。

中学校最後の文化祭なので,中学生なりに気合いも思い入れも強く込めて取り組みます。

都会は中学でもコンクールのようなものがあるらしいですが,所詮長野県。一番の舞台は全校生徒が観てくれる文化祭です。

昨年と同じ顧問の先生は,昨年と同じようなことをやろうとしました。

決定した台本。書籍化もされているプロの作品。やるにはジョウエンキョカというものが要る。らしい。

先生が取った行動は,タイトルもせりふもそのまま。でも作は「演劇部」にして上演しようというもの。

副部長だった私は去年のあのもやもやがそのままになっていたし,そういうのはだめだと知っていた。顧問に掛け合ったけれど,方針は変わらなかった。

なので部活をやめました。引退の少し前に,自分から退部しました。
「自分は演劇が好きだから,こういうやり方は嫌だ。演劇人でいたい。」みたいなことを顧問に言いました。

顧問はこう言ってきました。

『途中で辞める人はさ,次も途中で辞めるんだよ』

そんなこと決めつけるなよ。顧問なりに止めようとしている言葉であっても,そんな言い返せなくなること言わないでよ。

と,心の中は本当に大嵐で,副部長カサハラは退部したのでした。もう一人の副部長に著作権とか上演許可とか言っても,「えっ,知らない」と一蹴され,自分のやっていることは間違っているんだろうかと思ったものです。

文化祭当日は,観たくない気持ちと観たい気持ちが半々で,それでもがんばって観ました。3年生の演技は特に良かったらしく,友達が泣いていました。
その友達を見て,私はとてもフクザツな気持ちになりました。


「フクザツ」なのは,何がフクザツだったのかと言うと,

嘘で作られたお芝居を観て泣いている友達が,騙されているようでかわいそうだったり,

私も辞めずにあっち側にいたら,同じように評価されたのかなとかだったり,

そんないろんな気持ちが混ざっていました。


気持ちの整理ができて,半年くらい経ってから作者さんの劇団に連絡を入れました。

劇団の大人のひとはすぐに対応してくれて,学校や顧問の先生にも電話してくれたようでした。

退部したことも,連絡したことも,後悔はしていないし,私の中では正しい判断をしたと思っています。

だってそれが作品や作者や演劇を大事にするってことだと思うから。


+++


当時の顧問に言ってやりたい。

私は高校3年間皆勤でしたと。

公欠以外は欠課も1時間だってありませんでしたと。

それは部活が楽しかったからです。

きちっと決められたルールに乗っかって部活をやったからこそ楽しかったし,「高校3年間でこういうことをやりました」と堂々と周りに言える。

辞めることを全て悪いことのように取らないでほしい。

私が学校の先生のことが苦手なのは,世の中ではなく学校の法律でモノを見て考えているからです。

“教育の場では許容されるもの”の援用が過ぎることに,

ご本人が気づいているのか,いないのか,それはわからないけど,

舞台に立つのはあなたじゃない。私達子どもなんです。

直接評価されるのもあなたじゃない。私達子どもなんです。

そして大人には子どもを守ってほしいんです。顧問の仕事は脚本を書くことでも演出をすることでもない。部をマネジメントすることなんです。

世の中にはこういうルールがあるよってことを,部活を通して教えてくれるのが顧問なのではないのですか。
ルールとルールの間に隙間があることは,他のどこかの大人が教えてくれるから,いいです。
餃子のたれのような,スタンダードなルール。
そういうものを,あなたには教えてほしかった。



そう言ってやりたい。




中学の部活の同期にもたまに会います。

会うけど,そのたびいつも少しだけ,心が痛みます。



こんなことを,思い出しています。もう10年以上も前のことです。

(中学の部活の練習室。多目的。中学でいちばん好きな場所だったなぁ。)

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