Monday, January 22, 2007

むかしのはなし

中学のクラスメイトに、なおちゃんという子がいた。
なおちゃんは、中学2年の終わりに引越し、転校してしまった。


なおちゃんちは、出身校じゃない小学校のすぐ近くにあって、モダンなお宅だった。
犬がいて、ちっちゃいお庭があった。
おウチにあがらせてもらったためしはないけど、素敵なおウチなんだということはよくわかった。

なおちゃんのお父さんはどうやら、ずうっと前から単身赴任しているようだった。
たまたま帰り道が似たような方向だったから、2年の3学期のほんの一部分、なおちゃんちに、私と、もうひとりの友達(ときたまもうひとり)で寄っていったことがあった。

それからしばらくして、なおちゃんが東京に引っ越すことを知った。

とくべつ仲がいいわけでもないけれど、やっぱりもうこのご家庭に足を運ぶことがないのだと思うと、ちょっとだけしゅんとした。


いつか、なおちゃんが遠くにいるところで、私と友達は、彼女のお母さんから話を聞いたことがある。

「これ以上お父さんと離れていたら、あの子はお父さんのことを忘れてしまう。」

そんなようなことを、おばちゃんは言っていた。
思わずなおちゃんの方を見ると、なおちゃんは犬と楽しそうに笑っていた。

それを聞いて、私はきょとんとしてしまった。

生まれたときからずっと、あるいは生まれる前から、なおちゃんがお父さんにあっていないのならともかく、(いつから会っていないのかは知らないまんまなのだけれど)自分のお父さんを忘れてしまうことなんてあるんだろうか。



というか、忘れるはずないよ。



そう中学2年の私は思っていた。
そしてなおちゃんはお父さんに会うために、東京に向かった。

小さいころ、クラスメイトが転校するときなんかに「忘れないでね」ってことばがいっぱい聞こえた気がする。
私はそのことばがきらいだった。

だって、わすれるはずないもの。そんな当たり前のこと、言わないでって思ってた。

だけど。







あのときのおばちゃんのことばが、今思い返すととっても重く、深く、わたしのなかに染み込んでいる。

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