気づけばあっと言う間に師走も去っていきますね…。昨年初めてまとめシリーズで高校演劇編を作ってみましたが,今年は昨年以上にたっぷり観たので高校演劇編も続行です。いつも5本でまとめようと思っているのに,今回はついに絞ることができませんでした…。なぜなら,
1~2月:関東大会(八千代会場・千曲会場)
4月:桜町高校の公演@俳優座劇場
6月:松川高校の公演@まつもと市民芸術館
6~7月:長野県内の高校を9校で文化祭公演巡り
7~8月:全国大会・長野県北信地区大会
9月:長野県中信地区大会・東京都山手城南地区大会
11月:長野県大会
12月:塩尻市民演劇フェスティバル
におでかけしたから…。自分でも若干引くぐらい観に行っちゃったから…。笑
70本ちょっと観た中から選んだ今年のマイベストをご紹介します。タイトルをクリックしていただければ,感想の記事にとびまーす。
1. 東京都立桜町高校演劇部『死刑囚のπ』
作:桜町高校といのさん @八千代市市民会館/1月
桜町高校の皆さんにとっては2014年の作品なのかもしれませんが,私は2015年に入って初めて出会ったので今年の扱いです。子どもは少なからず,大人に振り回されて生きていること。
大人の影響を受けて生きていること。
生涯に亘る傷が心に残ること。
その中でも,自分は何者なのか見出していくこと。(部活に打ち込むことかもしれないし,進路を拓くことかもしれない。)
そういうものを思い出したり考えたりするのって,すごくぐちゃぐちゃした気持ちになるし,ていうか触れたくない場合もあるし,とってもヒリヒリする。
そこにあえて触れるこのひとたちって,なんて強いんだろう。強くないかもしれないけど,その覚悟が胸を打つ。500桁の円周率を覚えて生でパフォーマンスするあたりに,その覚悟が見える。
あと,これを東京の高校がやったというのも,地方出身の私としてはずしっとくるものがありました。これは多分,長野県じゃ絶対にできない作品。情報過多である一方で何かが欠落している街トーキョー,いいものも悪いものも全て混ぜこぜの街トーキョーで生きる高校生だから,できた作品なんだろうと思います。
大人になってからこの作品に出会えたのは,大袈裟な言い方かもしれないけど財産です。
2. 静岡理工科大学星陵高校演劇部『ブルーシート』
作:飴屋法水 @八千代市市民会館/1月
途中息ができなかったし,トンビの鳴き声と共に幕が降りたときは(とんでもないものを観てしまった…)と思いました。テーマが重いだけならこんなに印象に残りません。彼・彼女から出てくる言葉がとても生々しくて,桜町と同じくらいぐちゃぐちゃしていて,それが私の体に刺さってきました。舞台上と客席がものすごく離れているのに,それをあっさりと越える「圧」を感じました。「圧」を感じた高校演劇は,ずいぶん久しぶりだったように思います。
今月に入って,この作品のオリジナルキャスト(福島県立いわき総合高校の卒業生)が出ている『ブルーシート』を観ました。Twitter上で“ある意味星陵はものすごいコピーだった”と評している人がいたけど,ほんとにそれ。オリジナルを観たからこそ,星陵がかなりのインパクトだったことを再認しました。
オリジナルの舞台は「校庭」で,天井のある文化会館じゃない。だけど最初から緞帳が上がっていたり,奥にある「何か」の連なりの存在なんかで,そこが文化会館であることはもう忘れてしまいました。そう。緞帳が開いてる状態から大会ってスタートできるんだということも知ったので,いろんな意味で衝撃的でした。
やりたいこととやれること(素敵なキャスティング)が成功していて,お芝居も舞台美術もものすごくハイセンスだった。そんな総合力で,私の心はびったびたにこの世界に浸かってしまったのでした。
3. 浜松海の星高校演劇部『大正ガールズエクスプレス』
作:日下直子 脚色:川口多加 @八千代市市民会館/1月
1~3が南関東大会で埋まってしまった…。しかしそれくらい刺激的な大会だったんです。こんなにこんなにエンターテインメントな高校演劇,私の中では初めてだったので,とにかく胸が踊りまくった60分でした!私が『はいからさんが通る』とかそのあたりの時代が好きということを差っ引いても,すっごい舞台でした。
高校演劇ってプロデューサーが役者を選んで→外部から呼んで公演を打つ…ということができませんよね。今いるメンバーでキャスティングする。だからキャストの人数が多い作品になればなるほど,調整が難しくなっちゃうと思うんです。
が!この作品は(いわゆる)ちょい役のキャスティングまでドンピシャリすぎて,とにかくびっくり。身長・体型・声といった個性を活かしてこの役なんだなということがよーくわかりました。せりふの有無に関わらずありとあらゆるキャストさんがはまり役なんて,高校演劇でありえるんですかという感じ。
ビジュアルでも攻め攻めで,あんなに大量の着物と袴を揃えるとか,よし子ちゃんが着替えてもお着物の色味がビフォーアフターで一緒だから視覚的にわかりやすいとか,絵の完成度の高さとか,こだわりの演出を堪能できたなと思います。
これを楽しそうにやってのけている彼女達から,本当にパワーをもらえました。お芝居の力を直に感じられる作品だったと思います。
3. 神奈川大学附属中・高校演劇部『恋文』
作:小林友哉 潤色:大庭陽一&演劇部 @千曲市更埴文化会館あんずホール/2月
『大正ガールズエクスプレス』と同率3位!このお芝居もまた,『大正…』と同じくたくさん登場人物がいるのに一人一人ドンピシャリなキャスティングができていて,かつひとの心の動きがきちんと見える作品になっていました。高校演劇というとカンパニーの実情から男性役を女性が演じるということが間々あると思うのですが,『恋文』は役とキャストさんの性別がきちんと合っていて,作品テーマである「恋愛」を丁寧に扱っていました。なのでより一層ドキドキしてしまうという…。
自分の気持ちと相手に正直に向き合うってとても難しいことなのに,そこにどストレートで立ち向かう神大附属の皆さんの潔さも良かったです。2010年代にこんなお芝居があることに,正直驚きです。
演じている側が楽しそうだな~という空気もたっぷりあって,高校演劇の醍醐味を凝縮したようなカンパニーと作品でした。
5. 長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部『南洋記』
作:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部 @長野県松本蟻ヶ崎高校231教室/7月
今年,南北の関東大会におでかけして,各都県の作風というか地域性がなんとなく自分なりに掴めたのです。長野県は今あるものに実直に向き合って,外ではなく内面へアプローチしている感じだなぁと思っていたんですが,まさしくそんな舞台でした。完全に体制が変わり,改めて自分達のアイデンティティを確認する題材として中島敦を選択するあたりに,蟻高の真面目さが伺えました。笑
あと,私今年の蟻高の3年生は1年生の時からずっと文化祭で観ていて。その人たちの引退公演を観たくて足を運んだのですが,3年生の実力とそれに必死に追いつこうとする1,2年生の姿が時の流れを感じさせてくれて,作品+αのところでとても心に残る舞台でした。
特に3年生は力があることはこれまでもすごく伝わってきていたのですが,過去の大会の結果としては残らなくて。でも今回は力とその出し方がうまくいっていて,これを大会作品として持ってきたら周りがどう出てきても県に行くだろうなと思うことができました。実際そんなこと叶いやしないけれど,そう感じさせてくれてありがとう という作品と舞台でした。
6. 長野県長野東高校演劇部『カタイジ』
作:高場光春 @長野県長野東高校第2体育館/7月
昨年あれだけキャストがいるお芝居をやっていたのに,今年は少数精鋭だった長野東。パンフレットをめくると,決して人数が少なかったからという訳ではないみたいなのですが,あえてこのお芝居を大会作品として選択したところに覚悟が見えた気がして。「自分なりの正義」というものが私達一人一人にあるとしたら,それは集団の中で少しずつ,確実に,どこかで,何らかの歪みやすれ違いをもたらすのではと思います。『カタイジ』はそれがよーく見える作品で,表と裏,建前と本音が絶妙にチラチラするお芝居で,気づいているけど気づかないふりをしている女子高生達のギスギス感がたまらなかったです。
大人になってしまうと,考えが合わなかったり面白くない相手に出会っても,「所詮仕事だからな」とか,プライベートなら「付き合わなくてもいいや」と思えばいいと思ってしまう。だけど部活はそれで済まないところも大きいし,本音をぶつけて傷つけるリスクを取れるところが若さなんだろうなと感じました。私が高校生のときに避けていた部分。そのリスクやギスギスが堪能できて,痛気持ちいい時間でした。
本そのものも面白いけれど,力のある人たちがやるとこうなるのか!というところがしっかり味わえました。文化祭公演はまだ方向性に迷っている感じもものすごい伝わってきて,これから成長していくという段階を観られたのも良かったなーと思います。
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はいっ。以上,今年の私のマイベスト6でした。
とにかく今年度までは頑張って地元の高校演劇を観ると決めていたので,目標は達成できたかな~と思います。
来年も,心ときめく舞台に出会えますように☆
今年おでかけした主な会場。
1&2月のあんずホール。
7月の長野東高校第二体育館。
またまた8月にあんずホール。
9月のまつもと市民芸術館。
そして11月のサンテラスホール。
南関東大会と彦根の写真がなーい!(><)笑